税金!トレーニング部

このブログは税理士・会計士のための総合支援サイト「会計事務所の広場」の部活動として、中小企業の経営者さんを応援することを目的に、日頃から疑問に思っている「税金や節税」を中心に全十回にわたって紐解いていきたいと思います。 会計事務所の広場:https://kaikei-hiroba.com/

第三回 2020年に中小企業は不動産投資で節税出来るのか?!検証してみました

 部長:今回も皆様、アクセスいただきありがとうございます!

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部長:前回は投資が節税にもなるということを学びましたが、今回は投資の王道と言われている「不動産」について検証してみたいと思います。

 

部員:不動産といっても様々な用途がありますよね。戸建住宅、マンション、店舗や事業用地、どんな物件でも良いのでしょうか?

 

部長:会社が法人税の軽減に不動産を利用するのであれば、それなりの条件が必要になってきますよね。事業と全く関係なければ経費にはなりませんから。

 

部員:そうか!経費として計上出来ることが条件ですよね。事業用地とか店舗とか、あとは社宅などですね。そう考えると意外と限られてきますねぇ。

 

部長:そうなんです。実は投資や節税の王道のように考えられている不動産ですが、法人が投資や節税に利用する目的にマッチする物件は意外と面倒なことが多くなります。まずは物件の購入額ですが、そんなにまとまった資金があったとしたら、もしくはまとまった融資を受けれるとしたら事業投資や後継者問題を抱えている関係会社を友好的M&Aで救済してあげようとか考えますよね。

 

部員:そうですよね。それを目標に節税を学習しているわけですから。でも、なぜ不動産が節税や投資の王道のように思われているのでしょうか?

 

部長:それはとても良い疑問ですね。そもそも不動産を持っていれば安泰と考えられていたのは前時代的な思考で、「大地主=資産家=事業主」という形式が一般的だったので企業がたくさん不動産を所有しているイメージが定着したのでしょう。

それに対し現在は、「投資家=株主」によって「経営のスペシャリスト」が任命され、収益を還元するようになりましたから。大企業でも経営スタイルによってIT関連やサービスといった業種では不動産をほとんど保有してない企業もあります。

 

部員:あー、なるほど。言われてみると、老舗の大企業は不動産関連の部署を設けていますよね。

 

部長:はい。大企業は事業所の数も多く、所有している不動産の資産規模も大きいです。専門知識のある専任者や管理、警備部門も必要ですが、不動産事業だけで収益を出しています。それだけではなく、不動産は「損益通算」として「課税される所得を減らす」ために重宝されています。

 

損益通算を学ぼう

部員:また新しいキーワードが出てきましたね部長。「そんえきつーさん」の説明をお願いします。

 

部長:「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」で生じた黒字と赤字を合算し、相殺することを「損益通算」と言います。つまり、不動産は本業と合算して最終収益を調整して所得税を下げることが出来るんです。

 

部員:そんなカラクリがあったんですね。でも中小企業には数千万円の不動産をいくつか所有することは出来るかもしれませんが、別事業としての管理したり専任者を雇うのが難しいですね。

それならば、管理会社に預けてしまうのはどうでしょうか?

 

部長:着目が良いですね。でも、実は、それが不動産屋さんが用意している罠なんですよ。

 

部員:えっ!ワナにハマりそうだったんですか?良いアイディアだと思ったのに。

 

部長:はい。不動産の広告でよく、「表面利回り」という言い回しを使っていることに気づきませんでしたか?

 

部員:そういえば何でそんな書き方しているのだろうと不思議に思っていたんです。

 

表面利回りとは?

部長:表面利回りとは、年間の満室想定の家賃収入を物件価格で割った数値です。

表面利回り=【年間の満室想定の家賃収入】÷【物件価格】×100%=○○%

部長:表面利回り10%って、一見、とても収益が上がりそうな物件に見えますが、管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、修繕費用などが含まれておりません。ちなみに物件管理を委託する場合、家賃の5%が相場となっています。

 

部員:じゃあ、管理費自体は入居者からもらうとしても、物件を管理会社に預けた場合、残りの5%から修繕積立金、固定資産税、都市計画税、修繕費用などが引かれたら利益がなくなっちゃうじゃないですか!

 

部長:それだけではありません。空室リスクもあります。入居者が退去した場合、部屋をクリーニングして次の入居者が決まるまで仮に1ヶ月空いたとしたら一ヶ月分の家賃が入らないので、その年度は赤字決定です。それ以外にも想定家賃は現在の家賃相場であって、不動産屋さんが高めに設定しているかもしれませんし、10年後に同じ家賃設定で入居してもらえる保証もありません。売却するにしても金額が大きいので時間がかかりますし、購入金額を上回るケースは非常に稀です。購入した物件が住宅でなくても、不動産物件には常に同じようなリスクが付きまといます。

 

部員:そうなんですね。法人の節税に向かなくても、富裕層が海外の不動産で節税していると聞いたことがありますが、どうなんでしょうか?

 

部長:海外不動産が強力な節税になるとして富裕層の間で人気でしたが、改正がありまして令和3年以降の申告から減価償却分は他の所得と損益通算出来なくなりました。つまり、2018年以降に購入した物件は、全額経費にならないということになります。

出典:令和2年度税制改革大網https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/140786_1.pdf?_ga=2.41436706.1805248028.1579857686-106295652.1579857686

 

部長:海外不動産の他に、タワーマンションを利用した相続税の節税というのもありましたが改正によって、これもほとんどメリットが無くなりました。たとえ相続税が1000万円節税出来たとしてもその物件がいつ相続されるかわかりませんから、売却のタイミングによっては売却益がマイナスとなってトータルで3000万円の赤字になったりするケースが多々見受けられます。

 

部員:相続のタイミングですか、、、。そうですね。ウチのジイさんもすごく元気で困ってますw

 

部長:相続後1年以内に物件を売却して、否認されたケースが確認されているようなので、タワーマンションによる節税はオススメしませんね。

 

部員:わかりました。不動産取得による法人での節税は考えないようにします。これまでの不動産によるイメージがだいぶ変わりました。

 

部長:そうですね。社会のトレンドや新技術といった時代の流れが昔と比べると、とても早くなっています。大きくて動かしづらい資産は今の時代にはマッチしないのではないでしょうか。

 

部員:はい。今回は損益通算を学べたのが良かったです。次回も宜しくお願いします!

 

 

 

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